ユースケース別技術スタック選定ガイド
ユースケース別技術スタック選定ガイド
このドキュメントは、実際のプロジェクトでフロントエンド、バックエンド、データベースなどの技術を組み合わせて選定する際のガイドです。典型的なユースケースごとに、推奨される技術スタックの組み合わせとその理由を説明します。
ブログ・コンテンツサイト(読み取り中心)
特徴: 読み取りが中心で、書き込みは稀(記事投稿時のみ)。静的サイトとして配信可能。
推奨組み合わせ
Astro + SQLite
構成: ビルド時にSQLiteからデータを読み込み、静的HTMLを生成
メリット:
- サーバー不要(完全に静的サイト)
- ビルド時にSQLクエリで柔軟なデータ取得
- デプロイ後はCDNで高速配信
- 運用コストが極めて低い
デメリット:
- リアルタイム更新ができない(再ビルドが必要)
- 動的なコンテンツには不向き
適している規模: 小規模〜中規模(数千記事程度まで)
選ぶべき場合:
- 読み取り中心のコンテンツサイト
- サーバー運用を避けたい
- 運用コストを最小化したい
- ビルド時にデータを取得して静的HTMLを生成する方式で問題ない
Astro + Markdown(ファイルベース)
構成: Markdownファイルを直接読み込み、静的HTMLを生成
メリット:
- 最もシンプル(DB不要)
- Gitでバージョン管理可能
- 人間が直接編集可能
- コンテンツとコードが同じリポジトリで管理可能
デメリット:
- 複雑なクエリができない
- メタデータの管理が限定的
- 大規模サイトには不向き
適している規模: 小規模(数百記事程度まで)
選ぶべき場合:
- 小規模なブログ・ドキュメントサイト
- コンテンツをGitで管理したい
- 最もシンプルな構成を望む
- 開発者が直接Markdownを編集する
Next.js + PostgreSQL(SSG/ISR)
構成: ビルド時またはリクエスト時にPostgreSQLからデータを取得
メリット:
- 大規模サイトに対応
- 動的な機能も追加可能
- キャッシュ戦略(ISR)で高速化
- リレーショナルデータの柔軟な管理
デメリット:
- サーバー運用が必要
- 運用コストが高い
- 設定が複雑
適している規模: 中規模〜大規模
選ぶべき場合:
- 大規模なコンテンツサイト
- 動的な機能(コメント、検索等)が必要
- 既にPostgreSQLを使用している
- サーバー運用が可能
ECサイト・ショッピングサイト
特徴: 商品情報、在庫、注文、ユーザー情報など、多様なデータと高い整合性が必要。
推奨組み合わせ
Next.js / Vue + PostgreSQL
構成: フロントエンド + バックエンドAPI + PostgreSQL
メリット:
- 強固なACID特性(在庫管理、決済処理)
- リレーショナルデータの管理
- トランザクション処理
- データの整合性保証
適している規模: 小規模〜大規模
選ぶべき場合:
- 在庫管理、決済処理など整合性が重要
- リレーショナルデータ(商品、注文、ユーザー等)を管理
- トランザクション処理が必要
- 標準的なECサイト
Next.js + MongoDB + Redis
構成: MongoDB(商品情報、柔軟なスキーマ)+ Redis(セッション、キャッシュ)
メリット:
- 柔軟な商品情報管理
- 高速なキャッシュ
- 水平スケーリング
- 非構造化データの扱い
デメリット:
- 整合性保証が弱い(在庫管理には注意が必要)
- トランザクション処理が限定的
適している規模: 中規模〜大規模
選ぶべき場合:
- 商品情報が多様で柔軟なスキーマが必要
- 大規模なスケーリングが必要
- 在庫管理の整合性が最重要ではない
- 高速なキャッシュが必要
リアルタイムアプリケーション(チャット、コラボレーション)
特徴: リアルタイムでのデータ同期が必要。複数ユーザーが同時にアクセス。
推奨組み合わせ
React / Vue + Firebase / Supabase
構成: フロントエンド + Firebase Realtime Database / Supabase Realtime
メリット:
- リアルタイム同期が組み込み
- サーバーレス(運用負荷が低い)
- 認証機能が組み込み
- 迅速な開発が可能
適している規模: 小規模〜中規模
選ぶべき場合:
- リアルタイム同期が最重要
- バックエンド運用を避けたい
- 迅速な開発が必要
- 認証機能も必要
Next.js + PostgreSQL + WebSocket + Redis
構成: PostgreSQL(永続化)+ Redis(Pub/Sub、セッション)+ WebSocket
メリット:
- より細かい制御が可能
- 大規模スケーリングに対応
- データの永続化と整合性保証
- カスタマイズ性が高い
デメリット:
- 実装が複雑
- 運用負荷が高い
- 開発時間が長い
適している規模: 中規模〜大規模
選ぶべき場合:
- 大規模なリアルタイムアプリケーション
- 細かい制御が必要
- データの整合性が重要
- 運用チームが充実している
モバイルアプリ(オフライン対応)
特徴: オフラインでも動作し、オンライン時に同期。ローカルデータ保存が必要。
推奨組み合わせ
React Native / Flutter + SQLite + Firebase / Supabase
構成: ローカルSQLite(オフライン対応)+ Firebase/Supabase(同期)
メリット:
- オフライン対応
- リアルタイム同期
- サーバーレス
- ローカルデータの高速アクセス
適している規模: 小規模〜中規模
選ぶべき場合:
- オフライン機能が必要
- モバイルアプリ
- リアルタイム同期が必要
- バックエンド運用を避けたい
データ分析・BI(ビジネスインテリジェンス)
特徴: 大量のデータを集計・分析。読み取り中心だが、複雑なクエリが必要。
推奨組み合わせ
PostgreSQL / MySQL + Redis(キャッシュ)
構成: リレーショナルDB(分析)+ Redis(集計結果のキャッシュ)
メリット:
- 複雑なSQLクエリ
- 集計処理の高速化
- データの整合性保証
- 標準SQLによる柔軟な分析
適している規模: 中規模〜大規模
選ぶべき場合:
- 複雑な集計・分析が必要
- リレーショナルデータの分析
- 集計結果のキャッシュが必要
- 標準SQLを使用したい
MongoDB + Elasticsearch
構成: MongoDB(データ保存)+ Elasticsearch(全文検索、集計)
メリット:
- 柔軟なデータ構造
- 高速な全文検索
- 大規模データの分析
- 非構造化データの扱い
適している規模: 大規模
選ぶべき場合:
- 非構造化データの分析
- 全文検索が必要
- 大規模データの処理
- 柔軟なデータ構造が必要
マイクロサービス・分散システム
特徴: 複数のサービスが独立して動作。各サービスが独自のデータ保存方法を選択可能。
推奨組み合わせ
サービスごとに最適なDBを選択
構成例:
- ユーザーサービス: PostgreSQL(整合性重要)
- 商品サービス: MongoDB(柔軟なスキーマ)
- セッションサービス: Redis(高速アクセス)
- ログサービス: Elasticsearch(検索・分析)
メリット:
- 各サービスに最適なDBを選択
- サービス間の独立性
- スケーリングの柔軟性
デメリット:
- データの一貫性管理が複雑
- 運用が複雑
- 複数の技術を扱う必要がある
選ぶべき場合:
- マイクロサービスアーキテクチャ
- 各サービスが独立して動作
- サービスごとに最適なDBを選択したい
- 運用チームが充実している
選定時の考慮事項
1. プロジェクトの規模
- 小規模: シンプルな構成(Astro + Markdown、SQLite等)
- 中規模: 標準的な構成(Next.js + PostgreSQL等)
- 大規模: 分散構成、マイクロサービス
2. チームのスキル
- フロントエンド経験: React、Vue、Next.js等
- バックエンド経験: Node.js、Python、Go等
- データベース経験: SQL、NoSQL等
3. 運用リソース
- 最小限: BaaS(Firebase、Supabase等)
- 標準: 自前運用(PostgreSQL、MongoDB等)
- 充実: マイクロサービス、分散システム
4. コスト
- 初期コスト: オープンソース vs 商用
- 運用コスト: 自前運用 vs マネージドサービス
- スケーリングコスト: 使用量に応じた課金