CMS運用負荷比較
このドキュメントは、CMSの運用形態(自己ホスト vs マネージド)による運用負荷の違いをまとめたものです。「作った後は手をかけたくない」という要件を満たせるかどうかの判断材料として活用できます。
運用形態の分類
マネージドサービス
運営会社がインフラ・セキュリティ・バックアップを管理。
例: Squarespace, Wix, Shopify, Contentful, Sanity, Strapi Cloud
自己ホスト
自分でサーバーを用意し、すべてを管理。
例: WordPress(自己ホスト), Strapi(自己ホスト), Ghost(自己ホスト)
自己ホストで必要な運用作業
自己ホストの場合、以下の作業が継続的に必要です:
| 作業 | 頻度 | 内容 |
|---|---|---|
| セキュリティアップデート | 週〜月 | OS、ランタイム、CMS本体の更新 |
| バックアップ | 日次 | データベース、ファイルのバックアップ |
| 監視 | 常時 | サーバー死活監視、エラー監視 |
| SSL証明書更新 | 年〜自動 | Let’s Encrypt等の更新 |
| 障害対応 | 不定期 | サーバーダウン、攻撃対応 |
WordPress vs Strapi:自己ホストの比較
「WordPressが非推奨なら、自己ホストのStrapiも同じでは?」という疑問への回答です。
運用負荷の比較
| 項目 | WordPress | Strapi |
|---|---|---|
| 言語ランタイム | PHP | Node.js |
| データベース | MySQL | PostgreSQL/MySQL/SQLite |
| セキュリティ更新頻度 | 高い(頻繁) | 中程度 |
| 攻撃対象リスク | 非常に高い | 低い |
| プラグイン脆弱性 | 頻発 | 少ない |
| コア更新の緊急性 | 高い | 中程度 |
WordPressの運用負荷が高い理由
1. 攻撃対象として狙われやすい
WordPressは世界のWebサイトの40%以上で使用されています。そのため:
- 自動化された攻撃ツールがWordPress専用に開発されている
- 脆弱性が発見されると即座に攻撃が始まる
- 放置されたWordPressサイトは高確率でハッキングされる
2. プラグイン地獄
WordPressの機能拡張はプラグインに依存しますが:
- プラグインの品質にばらつきがある
- プラグイン同士の競合が発生しやすい
- プラグインの脆弱性が頻繁に発見される
- プラグインが更新されなくなるリスク
3. 更新の連鎖
WordPressコアを更新すると:
- テーマの互換性問題が発生
- プラグインの互換性問題が発生
- 表示崩れやエラーの対応が必要
Strapiの相対的な優位性
| 観点 | 説明 |
|---|---|
| 攻撃リスク | マイナーなため標的になりにくい |
| プラグイン依存 | コア機能が充実、プラグイン少なめ |
| 更新の影響 | 影響範囲が限定的 |
| API設計 | ヘッドレスなのでフロントと疎結合 |
結論: 同じ自己ホストでも、StrapiはWordPressより運用負荷が低い。
運用形態別の比較表
| 選択肢 | 運用負荷 | コスト | 自由度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Squarespace / Wix | ◎ 最低 | 月額課金 | △ | 完全マネージド |
| Shopify | ◎ 最低 | 月額課金 | △ | EC特化 |
| Contentful | ◎ 低い | 従量課金 | ○ | マネージドヘッドレス |
| Sanity | ◎ 低い | 従量課金 | ○ | マネージドヘッドレス |
| Strapi Cloud | ○ 低い | $99/月〜 | ○ | マネージドStrapi |
| Strapi(自己ホスト) | △ 中程度 | サーバー代 | ◎ | 自己管理 |
| WordPress(マネージド) | △ 中程度 | 月額課金 | ○ | WP専用ホスティング |
| WordPress(自己ホスト) | × 高い | サーバー代 | ◎ | 非推奨 |
セキュリティリスクの比較
攻撃頻度の実態
| CMS | 市場シェア | 攻撃頻度 |
|---|---|---|
| WordPress | 約43% | 非常に高い |
| Shopify | 約4% | 低い(マネージド) |
| Wix | 約2% | 低い(マネージド) |
| Squarespace | 約2% | 低い(マネージド) |
| Strapi | <1% | 非常に低い |
WordPressは圧倒的なシェアゆえに、攻撃者にとって「効率の良いターゲット」です。
脆弱性の発見頻度
WordPressエコシステムでは:
- プラグインの脆弱性: 年間数百件
- テーマの脆弱性: 年間数十件
- コアの脆弱性: 年間数件
自己ホストで放置すると、これらの脆弱性を突かれるリスクが累積します。
マネージドWordPressという選択肢
自己ホストが難しい場合、マネージドWordPressホスティングという選択肢もあります。
例: WP Engine, Kinsta, WordPress.com Business
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| セキュリティ更新 | 自動(一部) |
| バックアップ | 自動 |
| サーバー管理 | 不要 |
| コスト | 月額2,000〜5,000円程度 |
ただし、プラグインの互換性問題やWordPress固有のセキュリティリスクは残ります。
「メンテフリー」の現実的な定義
完全なメンテフリーは存在しませんが、負荷の程度は選択で大きく変わります。
運用作業の発生頻度
| 選択肢 | 月あたりの作業時間目安 |
|---|---|
| Squarespace / Wix | ほぼ0時間 |
| Contentful / Sanity | ほぼ0時間 |
| Strapi Cloud | ほぼ0時間 |
| Strapi(自己ホスト) | 1〜2時間 |
| WordPress(マネージド) | 2〜4時間 |
| WordPress(自己ホスト) | 4〜8時間以上 |
選定の指針
メンテフリー優先の場合
- マネージドサービスを選ぶ: Squarespace, Wix, Shopify
- ヘッドレスCMSもマネージド版: Contentful, Sanity
- 自己ホストは避ける: 特にWordPress
カスタマイズ優先の場合
- ヘッドレスCMS + 静的サイト: フロント分離でリスク軽減
- Strapi自己ホスト: WordPressよりは運用楽
- 静的サイト + GitベースCMS: 攻撃対象がほぼない
予算優先の場合
- GitベースCMS + 無料ホスティング: Decap CMS + Cloudflare Pages
- Strapi + 安価なVPS: 運用スキルがあれば
- マネージドの無料枠: Sanity, Contentfulの無料枠
まとめ
| 要件 | 推奨 |
|---|---|
| 本当にメンテフリー | マネージドサービス一択 |
| 自己ホストするなら | WordPress以外(Strapiなど) |
| WordPressが必要なら | マネージドWordPressホスティング |
自己ホストの運用負荷を甘く見ると、セキュリティインシデントや深夜の障害対応に追われることになります。「友人に作ってあげる」ケースでは、特にマネージドサービスを強く推奨します。
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