スモールビジネス向けCMS選定

作成日:
技術選定 CMS スモールビジネス ウェブサイト

このドキュメントは、スモールビジネス(飲食店、小売店など)向けにウェブサイトを構築する際のCMS選定についてまとめたものです。「一度作ったら運用者が自分で更新でき、制作者の手がかからない」という要件を軸に検討します。

前提:よくある要件の矛盾

スモールビジネス向けのウェブサイト制作では、以下の要件がよく挙がります:

  1. 非技術者が自分で更新できる
  2. 制作後はメンテナンスフリーにしたい
  3. カスタム機能(原価計算、会計処理など)も追加したい

しかし、これら3つを同時に満たすことは難しいです。特に「カスタム機能」と「メンテナンスフリー」は相反します。


基本方針:役割の分離

ウェブサイト(コンテンツ管理)業務機能(原価計算・会計) は分離すべきです。

一つのシステムで両方を実現しようとすると、どちらも中途半端になります。

推奨する役割分担

役割推奨ソリューション
ウェブサイトマネージドCMS または ヘッドレスCMS
会計・経理freee / マネーフォワード
POS・売上管理Airレジ / Square / USENレジ
原価計算Googleスプレッドシート / 専用ツール

選択肢の整理

パターン1:完全マネージド(最もメンテフリー)

Squarespace / Wix / Shopify などのウェブサイトビルダー

項目評価
メンテナンス負荷◎ ほぼゼロ
非技術者の更新◎ 直感的
デザインの自由度△ テンプレート依存
カスタム機能× 限定的
コスト月額1,000〜3,000円程度

適しているケース:

  • 飲食店、小売店の基本的なウェブサイト
  • メニュー、営業時間、アクセス、お知らせ程度の情報発信
  • EC機能が必要な場合はShopify

選ぶべき理由:

  • セキュリティ・バックアップは運営会社が担当
  • テンプレートの品質が高く、「デザインの妥協」は実際には小さい
  • 本当に放置できる

パターン2:ヘッドレスCMS + 静的サイト

Sanity / Contentful + Astro / Next.js

項目評価
メンテナンス負荷○ 低い(マネージドCMS利用時)
非技術者の更新○ 管理画面あり
デザインの自由度◎ 完全自由
カスタム機能○ フロントで実装可能
コスト無料枠あり〜従量課金

適しているケース:

  • デザインにこだわりたい
  • 将来的な機能拡張を見据えている
  • 制作者がフロントエンド開発できる

主要なヘッドレスCMSの比較:

CMS特徴無料枠
Sanity柔軟、画像最適化が優秀、Astroと相性◎寛大
Contentful安定、UIが直感的、企業採用多いあり(小規模OK)
Strapiオープンソース、自己ホスト可能完全無料(自己ホスト)

パターン3:GitベースCMS + 静的サイト

Decap CMS(旧Netlify CMS)/ Tina CMS + Astro

項目評価
メンテナンス負荷○ 低い
非技術者の更新△ 慣れが必要
デザインの自由度◎ 完全自由
カスタム機能○ フロントで実装可能
コスト完全無料も可能

適しているケース:

  • コストを最小化したい
  • 更新頻度が低い
  • 運用者がGitの基本を理解できる

パターン4:WordPress(非推奨)

項目評価
メンテナンス負荷× 高い
非技術者の更新◎ 管理画面が充実
デザインの自由度○ テーマ・プラグイン豊富
カスタム機能△ プラグイン依存
コスト無料〜(ホスティング費用別)

非推奨の理由:

  • セキュリティアップデートが頻繁に必要
  • プラグインの脆弱性リスクが高い
  • 世界シェアが高いため攻撃対象になりやすい
  • 「放置できる」は幻想(放置すると高確率でハッキングされる)

詳細は CMS運用負荷比較 を参照。


業種別の推奨

飲食店(バー、レストラン、カフェなど)

必要な機能:

  • メニュー・価格表示
  • 営業時間・アクセス
  • 写真ギャラリー
  • お知らせ更新
  • SNS連携
  • (あれば)予約導線

推奨: Squarespace または Wix

飲食店向けのテンプレートが充実しており、必要十分な機能を備えています。

原価計算について: 食材原価率の計算などはウェブサイトとは分離し、以下のツールで管理:

  • Googleスプレッドシート(シンプルで無料)
  • Airレジ(POSと連携した売上管理)
  • freee(会計・確定申告)

小売店(雑貨、アパレルなど)

必要な機能:

  • 商品紹介
  • 営業時間・アクセス
  • 新着情報

EC機能が必要な場合: Shopify

情報発信のみの場合: Squarespace または Wix


カスタム開発する場合の構成例

デザインや機能にこだわりたい場合の推奨構成:

Sanity(コンテンツ管理)
    ↓ API
Astro(静的サイト生成)
    ↓ デプロイ
Cloudflare Pages / Vercel / Netlify

メリット:

  • コンテンツ管理はSanityの管理画面で非技術者が更新可能
  • フロントエンドは完全に自由にデザイン可能
  • 静的サイトなので高速・セキュア
  • ホスティングは無料枠で十分

注意点:

  • 初期構築には開発スキルが必要
  • 完全なメンテフリーにはならない(フレームワークのアップデート等)

選定チェックリスト

質問回答推奨
本当にメンテフリーにしたい?はいSquarespace / Wix
デザインにこだわりたい?はいヘッドレスCMS + Astro
EC機能が必要?はいShopify
コストを最小化したい?はいDecap CMS + Astro + 無料ホスティング
会計機能をサイトに組み込みたい?はい再考を推奨(分離すべき)

まとめ

  1. メンテフリー最優先 → マネージドサービス(Squarespace / Wix / Shopify)
  2. カスタムデザイン必要 → ヘッドレスCMS + Astro(Sanity推奨)
  3. 業務機能(会計など) → 専用SaaSに分離(freee等)
  4. WordPress → 避けるべき(運用負荷が高い)

「ウェブサイトはウェブサイト、会計は会計」と役割を分けることで、それぞれの専門ツールの強みを活かせます。


関連トピック